2009年06月11日

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    f3972919.jpg重力ピエロ
    監督:森淳一
    製作:荒木美也子、守屋圭一郎
    脚本:相沢友子
    出演者:加瀬亮、岡田将生、小日向文世、鈴木京香
    撮影:林淳一郎
    配給:アスミック・エース
    公開:2009年春
    上映時間:119分
    製作国:日本
    言語:日本語

    「ハルが2階から落ちてきた。」

    このセリフが好きだ。
    非日常的と、えも言われぬ不安定さがうまく表現されてる。
    加瀬亮のなんだか頼りない、くもった声が、そんなセリフに奥行きを持たせる。



    この作品は確かこのセリフとともにCMで知り、興味を持った。
    原作は伊坂幸太郎で、あの「アヒルと鴨のコインロッカー」の作者と言えば通じるだろうか?
    アヒルと~は瑛太が出演しており、彼もまた本作のハルのように捉えどころのない存在だった。
    ちょっと風変わりな人が登場するのが、この人の作風なのかと思う。

    アヒル~にはあまり好印象を持っていないわたしだが、
    本作の映像の美しさやフランス映画を思わせる透明感が、
    放ってはおけない何かを感じさせた。
    主演の加瀬と岡田もなかなか好きな俳優だし、これは見るしかないかな、と。



    映画の冒頭部分は、大方の予想通り、
    「ハルが2階から落ちてきた」
    というシーンだった。
    しかし、完全に肩すかしを食らった形。
    カット割りやテンポがあまりにも悪く、なんともげんなりとする始まり方をしたのだ。
    原作を読んでいないのでなんとも言えないが、
    こまやかな気持ちの揺れ動きを表現することを得意とする作家さんだと推察する。
    きっとひとつひとつの文章にリズムをつけ、独特の世界観を形作っていると思うのだ。

    だのに、この監督は最初っから細かいことはどうでもいいといったそぶりで、
    美しい言葉たちを踏みにじっていく。
    横暴に行間部分を塗りつぶし、切り刻んでいってしまうのだ。
    最初の30分くらいで辟易としてしまい、席を立とうかと思ったほど。
    それをさせなかったのは、名だたる出演者の好演にほかならない。



    加瀬亮はセリフ回しには若干素人臭いところがあるが、
    その独特の存在感はほかにはないものがある。
    岡田将生はまだまだ若手ながら、
    ハルフウェイでの優男と本作での不思議と芯の強い男ハルは、
    同一人物とは思えない演じ分けができている。
    まさに演技派。これからの活躍が期待できる。
    脇を固める小日向文世、鈴木京香、岡田義徳も期待通りの好演。
    素晴らしい一体感を見せていた。

    良くなる要素はいくらでもあった。だからこそ悔やまれる。
    すべてが台無しになってしまったという感覚。



    そういえば監督はテレビ業界の出身。
    テレビドラマの助監督を経て、自身の脚本『Laundry』が2000年サンダンス・NHK国際映像作家賞 日本部門を受賞、同作品で監督デビュー。 by
    Wikipedia
    案外立派な経歴。なぜこんな映画になってしまったのかよく分からない。
    映画をちょっと甘く見すぎたのかな、監督さん。
    まるで一流の材料をそろえて大学生に監督させた作品みたいだったよ。
    これじゃあ携わった人が浮かばれないな、なんて思ってしまった。
    話題になったからいいのかな。
    ネットでの評価も良さそうだし。
    2009/6/11 00:38

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